飲食店の天井に雲龍図を描く方法
お寺の天井などによく描かれている龍の絵。京都の建仁寺や妙心寺の龍の天井画は特に有名ですよね。今回はそんなよくお寺で見られる天龍図を飲食店の天井に描く方法をお伝えしようと思います。
そもそも“雲龍図”とは?
雲龍図と呼ばれている龍の絵ですが、殆どが禅宗寺院の法堂の天井に描かれています。
法堂というのは修行僧が仏法の教えを学ぶ場なのですが、龍は特に仏教を主語する神様のような存在で、仏教の教えを降らせてくれると言われているそうです。なので、この龍に修行の場を見守ってくれるようにと法堂の天井に龍を描くことが多かったようです。ちなみに、龍神は水を司るので、火災から寺院を守るとも言われているそうです。
そんな龍の天井画。日本人なら誰しもロマンを感じますよね。私は水墨画で特に龍画をよく描きます。想像上の生き物なので、自分が思うように自由に描けるという点と、描いていると勇気をもらえるからとても好きな画です。
私が雲龍図を描かせていただいた店舗
そんな龍の絵を今回「くそオヤジ最後のひとふり」という京都 河原町 三条にあるラーメン屋さんの天井に描かせていただくことになりました。「なんて店名だ!(笑)」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ラーメンの出汁にこだわったオシャレな店舗さんです。京都河原町駅から女性の足で歩いて10分程度のところにあります。カウンターと2階席もあり、2023年9月にオープンした比較的新しい店舗です。大阪では知る人ぞ知る「人類みな麺類」系列のお店なんですよ。

店舗の壁には何で描く!?
店舗の壁は木・モルタル・コンクリート打ちっぱなし・クロス…などなど色んなタイプがあります。今回はなんと「和紙クロス」!インバウンドを対象にした和テイストな店舗さんだったため、壁や天井のクロスにも大変こだわりがありました。
「和紙だったら墨でも描けるのでは?」と思いますよね?
答えは「描けない」です。
理由は飲食店の壁クロスは大抵は“撥水加工”を施されえええているからです。つまり、水溶性の墨は弾きます!壁に絵を描くお仕事をいただいた際はかならず壁クロスの種類を聞いてサンプルを取り寄せすることをお勧めします。ちなみにサンゲツさんの壁クロスであれば無料で取り寄せもできますよ。私もダメ元で和紙クロスに試し描きしてみましたが、やはり弾いて全然だめでした。
他に、ジェッソ(絵具などの密着を良くするもの)をベースに塗ってから墨で描くというやり方もありますが、クロスにはおススメできないです。クロスは元々“絵が描かれる”という前提で作られていないので、ジェッソの密着が保証されないのです。(サンゲツさんのお問合せで伺いました)
結論、屋内用のクロス用ペンキがおススメです。私が使ったのは下記のアサヒペンさんの「屋内カベ用」の黒色です。水性塗料であれば臭さもなく飲食店さんで使いやすいです。

実際に私が描いている現場
一番最初にすることは「養生」です。
実は養生シートにも色んな種類があり、床は一番強い緑色の養生シートを使います。壁は軽さが必要なので透明の養生シート(もしくは白の養生シート)を養生テープで固定します。
一発で完璧な龍を描くことは不可能なので、鉛筆で下書きをします。和紙だったので鉛筆でも十分でした。(木の場合はかなり固い鉛筆、コンクリートの場合はチョークがおススメです)
飲食店さんの天井は熱がこもってペンキがはがれやすい傾向にあります。だから和紙をこすってペンキを食い込ませるように色を付けていきます。入れ墨のようなイメージでペンキを和紙に埋め込んでいく感じです。水の量を調整しながらしっかり和紙クロスに吸い込ませていくように描いています。

分かりにくいですが、換気扇部分は白の養生テープで実際は養生しています。
失敗したなぁと思ったのは脚立がなかったこと!もちろん持ってはいるのですが、新幹線に担いで乗ることを躊躇い、現場でお借りしようと思っていたので…その考えが甘かったです。事務室の椅子をお借りして、椅子をぐるぐるに養生してその上に立って描いています。

龍虎の戦いを天井に描くことにしました。龍と虎は2人の優れた傑物が相争い高めあうという意味なのですが、ラーメン道も高みを仲間同士で切磋琢磨して高めあう印象があったので、龍虎にしました。
よく武田信玄と上杉謙信に龍虎を例えられることが多いですよね。

こちらが完成になります。全長6M程度の天井かと記憶しています。
かかった時間は天井と側面の壁で丸1日です。集中が切れるので、24時間ぶっ通しで描いています。
仕上げに何かニスを塗った方が良いのでは?と気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、逆に塗らない方が良いです。ニスだけクロスから浮いてペンキと一緒にはがれてしまう可能性があるので。
壁の絵を描く時に注意点まとめ
特に注意すべき点を厳選して3つにまとめました
①壁がクロスの場合は現物をメーカーさんから取り寄せる
②黒のペンキが必ずしも黒ではないから少ない容量のものでためし描きする(ペンキで真っ黒は珍しいと思います。私が今回使ったものも、真っ黒ではなく若干グレーでした)
③養生で手間が全て決まる!養生を適当にすると、変なところにペンキが飛んで取返しが付かないことになります。養生で半日潰れることもあります。1人で大変な場合は助っ人を呼んで養生はしっかりやった方が良いです。
伝統を活かした構図を描き続ける理由
側面の武将の絵に関してはまた別のブログでお話ししようと思います。とにかく日本は今円安だからこそ海外の方に魅力を伝えるチャンスが広がっていると思います。そんな時にこのようなインバウンド向け店舗さんの絵を任せていただけて光栄でした。
元々はグラフィティのようなカラフルなイラストが好きでしたが、海外から日本を見つめる機会があり、今は日本の良さをアートで伝え日本人はもちろん海外の方にも日本に興味を持ってもらいたいと思っています。だからこそ、黒一本の墨絵はとても好きですし、日本古来の龍虎のような構図も大切にしたいと考えています。
このブログを見てくださっている方の中で水墨画をはじめ、和のイラストを描いている方の少しでも参考になればと思います。